先だって当社で電子マニフェスト自社開発システム「レムズ」導入説明会を開催したところ多くの排出事業者の皆様にご出席をいただきました。その際には廃棄冷凍カツの横流し事件を題材に、排出事業者に求められる産業廃棄物処理委託のあり方の話をさせていただきました。出席者とはかけ離れた業種の話ではありましたが、大変に参考になったという有り難い感想もお聞きすることができました。
このコラムも、ここ3回ほどは、廃棄物の基礎的な話ではありますが、結構専門的な内容で、もう少し身近な話題をというような声も聞こえてきそうですので、今回はちょっといっぷくして、食品廃棄物処理の現状について書かせていただきます。
1 食品廃棄物の発生及び利用の状況
まず、発生状況では食用仕向量(粗食料+加工用原料)8,500万トンのうち実に20%に当たる1,700万トンが廃棄物となっていて、しかも驚くことに650万トンは食べ残しや規格外品、期限切れ廃棄品などの可食部分(これを食品ロスと呼ぶ)です。この食品ロスの650万トンという数字がどの程度の量かということを他の統計と比較してみますと、世界全体の食糧援助量400万トンの1.5倍、コメの国内収穫量850万トンの76%に当たります。なんとも「もったいない」話しです。
また、処理の状況では事業系廃棄物では、60%が再(生)利用されているのに対し、家庭系では90%以上が焼却・埋立処分されており、市町村の手による一般廃棄物処理としては再(生)利用が進んでいないことが分かります。
2 諸外国との比較
各国における食品廃棄物の発生量と国民一人当たりの食品廃棄物量を比較すると次表の通りです。
前項で日本国内での食品廃棄物量の多さを書きましたが、先進諸国の中では決して多い状況でないことに二重の驚きを感じます。各国により統計の仕方が違っていたり、調査年度も2006年〜2012年とまちまちですので厳密な比較は無理としても、国民性や食糧生産国等の背景、更には食に対する考え方の違いがはっきり表れている結果として興味深いものがあります。
私自身、今回の廃棄冷凍カツ横流し事件をきっかけに初めて知ることとなった食品廃棄物処理の現状ですが、読者の皆さんはどのように感じられたでしょうか?また、先ほど開催されたG7環境相会議でも2030年までに食品廃棄物の発生を半減させる目標が採択されています。私たちは、飽食が許される豊かな時代に生きていることに感謝するとともに、無駄な材料は購入しない、食べ残しはしない等各人ができる対策を心掛けていきたいものです。
(注)文章中の掲載データは、消費者庁HPから引用させていただきました。