前々回までのコラムで、廃棄物処理を取り巻く状況が変化してきたことで廃棄物該当性の判断が難しくなってきたことを書きましたが、今回は時々出くわした「偽装有価物」について書いてみたいと思います。
排出者の不要物であっても、有価売却できるものは廃棄物に該当しないことは「廃棄物の定義」のところで書きました。おさらいですが、「有価売却できる」とは「物の価値@」から「輸送費(運搬料金)A」を差し引いても排出者のところにお金が入る取引形態のことです。市況変動の中でリサイクル原料としての価値@が上昇すれば昨日まで廃棄物として扱っていた物が、今日からは有価物として流通(@−A>0)することもあり得る話です。
ところが、世の中には悪知恵が働く人間がいて、実際には「開発研究費」「作業費」「容器代」等の名目で排出者に費用負担Bを求めているのに、表面上は@Aだけを根拠にして「有価売却」を装うケースが出てきています。これがいわゆる「偽装有価物」と呼ばれるもので、環境省も次のような通知を全国の自治体に発出して厳しく取り締まるよう指示しています。
平成25年3月29日 環境省産業廃棄物課長通知 「行政処分の指針」について
(2)廃棄物該当性の判断について
@ エ 取引価値の有無
占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと。
この通知の意味するところは、いかなる名目であっても排出者の費用負担Bが生じるときは、@−(A+B)により、取引価値=廃棄物該当性の判断をしなさいということです。従って、法律では第18条の報告徴収と第19条の立入検査の運用に関して、対象者を「廃棄物の疑いのあるものを含む物」を取り扱う者としているのは、こうした総合的な判断材料を許可権者が得ることを可能にするために設けられた規定です。
読者の皆さんのところでは「偽装有価物」の取扱いをされている物はないと思いますが、もし自らの不要物が有価売却できている物があるという方には、自己防衛策として次のことをお勧めしたいと思います。
1 売買契約書を作成する(引き渡し場所や輸送費の負担についても明記する)
2 振り込み等により入金状況が明らかになる方法をとる(納品書・領収書は当事者間で作
成するもので、信頼性が疑われることも)