前回のコラムでは、「有価売却」の定義は、「物の価値@」から「輸送費(運搬料金)A」を差し引いても、排出者のところにお金が入る取引形態だと書きました。有価売却に当たらない事例を挙げて確認してみましょう。
排出事業者A 収集運搬業者B 処分業者C
プラスチック製品製造業 Aで収集しCまで運搬 廃プラを原料に境界杭を製造
不要物の廃プラ発生 A運搬料金2,000円/t受領 @原料代として1,000円/t支払
このケースにおいて、排出事業者Aは、この不要物を処理するためには、1t当たり1,000円の負担が生じることとなります。よってこの不要物は、産業廃棄物である廃プラスチック類に該当し、有価売却には該当しないという解釈になります。従って、収集運搬を受託しているBはもちろん、原料代を支払っているCも産業廃棄物処分業の許可が必要という扱いになります。
昭和45年の廃棄物処理法制定以来、こうした解釈のもとに法の運用がされてきましたが、21世紀に入りこれまで以上にリサイクルが必要な時代を迎え、さすがに国も解釈・運用の変更に迫られたのでしょうか、平成17年に次のような通知が発出されました。
H17.03.25 環境省産業廃棄物課長通知「規制改革・民間開放3か年計画において平成16年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法適用関係)について」
第四 「廃棄物」か否かを判断する際の輸送費等の取扱い等
1 排出事業者が産業廃棄物を引き渡す場合において、排出者が運送費を負担し、当該輸
送費が売却代金を上回る等、経済的損失が生じている場合であっても、その物が再生
利用又はエネルギー源として利用するために有償で譲り受ける者が占有者となった時
点以降については、廃棄物に該当しないと判断して差し支えないこと。
上の事例に当てはめれば、この通知発出前までは処分業許可が必要であったCは、許可を持たなくても受入ができることになりました。同時に、排出事業者Aは、Cとの間の契約を従来の処分委託契約からプラスチック原料の売買契約書に変更する必要があります。当然ですが、Cに対し「研究開発費」等の名目で裏金が支払われることは厳禁です。なお、Cが有償で譲り受ければどんな場合でも適用されるというのではなく、その利用が製造業としての形態を成していること(原料としてマテリアル利用されていること)または、当該者が発電事業者、熱供給業者等として事業を確立・継続していることが条件となっていますのでご注意ください。