廃棄物処理法は難解(その2:なぜ法改正は繰り返されたのか)


前回、廃棄物処理法は制定以降度重なる改正が行われたてきたことをお伝えしましたが、今回はその理由について考えてみたいと思います。

理由は、大きく分けて2つありますが、まず1つ目は廃棄物が持つ特殊性又は廃棄物処理を取り巻く事情ということが挙げられます。「廃棄物」自体は排出者にとっては不要なものであり、その処理に掛かる経費は少なく抑えたいというのが本心でしょう。また、その処理の多くは委託により排出者以外の者が行っているという実態があります。こうした状況が産業廃棄物の適正処理を阻む大きな要因となっています。結果、全国各地で不適正な廃棄物に関する事件が発生し社会問題となってきました。例えば、一向に無くならない産業廃棄物の不法投棄事件、不正軽油製造過程で発生する「硫酸ピッチ」の放置事件、安定型最終処分場における有害ガスの発生や浸透水の汚染事件等々挙げればキリがありません。その度に、適正処理を確保するための規定を追加し、罰則を強化するという法律改正を繰り返してきたわけで、まさに「いたちごっこ」の歴史であったことを物語っています。特に、産業廃棄物の処理基準や産業廃棄物処理施設の維持管理基準の規定は、一般廃棄物の基準を準用し、かつ産業廃棄物の規定を付加していますので、改正のたびに膨らんだ条文はその解釈を一層難しくしています。 更に付け加えれば、法律・政令・省令のほかにガイドラインが設けられていたり、運用通知が発出されたりしていますので、これらも含めて理解をしないと適正な廃棄物処理が確保できない状況になっています。

次に、理由の2つ目として、廃棄物を取り巻く社会状況の変化が挙げられます。法律制定当初は、清潔の保持や公衆衛生の確保という色合いが強く、廃棄物を衛生的に「集めて・燃して・埋める」ことを中心とした処理体系を条文化したものでした。その後、バブルの崩壊とともに「循環型社会の構築」が叫ばれるようになり、大量生産・大量廃棄からの脱却が課題となりました。また、時を同じくして最終処分場の確保が難しくなったことも加わって、3Rの取り組みが全国的に広まっていきました。これに対応すべく、リサイクル技術に関する処理基準を設けたり、広域認定制度などリサイクルを推進する制度作りを行う等の法律改正が必要となりました。また近年では、よりグローバルな視点で、地球温暖化防止のために熱回収認定業者制度を導入するなど、制定当時の「衛生法」から「環境法」へと大きく様変わりしたことが、改正を重ねる要因となりました。この状況は、廃棄物処理法の所管官庁が、制定当時の厚生省から平成13年に現在の環境省に移管されたことでも理解をいただけるものと思います。