皆さま、こんにちは! 9月になり朝夕には秋の訪れを感じるとはいえ、今年も残暑厳しい夏でしたね〜。毎年のように異常気象という言葉を聞きますが、普通の気象の年って最近あったっけ?と素朴な疑問。過去の記憶と比較しての異常ではなく、これが今現在は普通だと考えた方が良いのでしょう。ともあれ、夏大好き人間としては日増しに日が短くなるこの時期は妙に感傷的になる。そんなメランコリックな気分に耽るTUBOJUNです!
異常というのはそもそも滅多にないということ。そんな滅多にない現象として時々話題になるのは竹や笹に花が咲いたというニュース。竹の開花・結実は60年から120年に一度と云われ、その珍しい開花時、竹は一斉に花を咲かせ一斉に枯死してしまう。そんな常には無い現象を目にして、古くは竹の開花を凶事の前兆に例えられたようです。と言っても、そもそも多くの人にとって「竹に花なんて咲くの?」でしょう。私も見たことありませんし。身近にありながら意外にミステリアスな竹について今回は語ってみましょう。
竹はイネ科の植物で、発芽してから長い年月、種ではなく地下茎という茎をのばしてそこから竹の子(筍)を増やすことで繁殖します。他の植物のように花を咲かせ、花粉を受粉することによって実を結実させてというプロセスを竹はたどらず、一本の竹から地中に茎を伸ばし無性生殖によって子孫を増やすのです。しかし、ある一定の時期に達すると稲穂のような形をした花を咲かせ、種子を実らせて竹は一生を終えます。開花・結実すると同時に葉も落ちるため光合成が出来なくなって地下茎で繋がった一個体の竹林全体が枯れてしまうのです。
竹の開花周期は人間の生涯と比較しても非常に長く、日本でも多く栽培されている孟宗竹(モウソウチク)は67年周期との記録があり、真竹(マダケ)は120年周期と推測されています。真竹の前回の開花は昭和40年代。若い竹から老いた竹まで世界中の真竹が一斉に花を咲かせ、そして一斉に枯れた。そして僅かに実った種から親となる竹が生え、地下茎を伸ばして再び繁殖し、長い年月をかけてまた新たな竹林が生まれる。それを知ると身近な存在の竹林がとても実はミステリアスに見えませんか?
竹の花はイネ科らしく稲の花に似て、またその実の栄養価は小麦に匹敵するとも云われています。救荒食物として飢饉を救った逸話もあるようですが、その実を食べる野ネズミを大発生させ壊滅的な農業被害により逆に飢饉を招くと考えられ、それも竹の開花が凶事とされる理由でもあります。ちなみに、昭和32年に発表された開高健の短編小説「パニック」はそれに着想を得た作品。異常発生した野ネズミの大群が文字通り人間世界をパニックに陥れ、集団的自我を持つその巨大なエネルギーが絶頂の中である日ふいに自壊するダイナミクスを描く現代の寓話です。この野ネズミの大群は果たしてコントロールを失った人類の未来を投影しているのか?開高健が壽屋(現・サントリー)のコピーライター時代に書き上げた文壇デビュー作であり初期の佳作と呼ばれる作品です。興味がありましたら是非ご一読を。
また、竹にまつわる言葉で面白いのは「竹の秋」といえば春の季語であり、逆に「竹の春」といえば秋の季語になることです。竹は春に繁殖しますが、筍に栄養分を奪われ親竹は衰え枯れたように黄ばんだ葉を落とします。かすかな風にはらりと散る姿を紅葉に例えたのが「竹の秋」と呼ぶ春の光景。それが秋になると竹は勢いを回復し、美しい緑鮮やかに葉を広げ盛んに茂りだした姿をして「竹の春」となるのです。ちょうど今が「竹の春」の時期。青々と茂った身近な竹林を散策しながら竹の不思議に思いを廻らしてみては如何?
ところで、真竹の開花周期は120年ですから次の開花は2090年頃。70年以上先のことですのでこのメールマガジンをご覧の方々も真竹の花をこの目で見ることは残念ながら難しいでしょう。えっ!?オマエも同じじゃないかって!?いやいや、私はその時、120歳になります。頑張って長生きして真竹の花をこの目でしかと見届けることが人生の最大の目標です。
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