2018年05月07日
廃棄物ひとくちコラム
第26回 <廃棄物処理法はどう変わったか(その5:産業廃棄物処理基準の強化Ⅱ)>
水銀廃棄物の話題で2回ほど中断しましたが、2月号に引き続いて、産業廃棄物処理基準の変遷に関して、「廃石膏ボード」の埋立基準の強化を例に書かせていただきます。石膏ボードは、1980年(昭和55年)頃から生産量が増加し、現在では年間700万トンが製造されています。建築物の内壁材として多く用いられ、加工がしやすいことからその需要が増加していることは皆さんご承知のとおりです。こうした中で、産業廃棄物として排出される「廃石膏ボード」の量も増加傾向にあり、年間110万トンに達しています。内訳は、解体に伴うもの80万トン、新築工事からの排出量が30万トンとなっており、今後は、解体に伴うものの増加により2040年頃には300万トンを超えると予測されています。
このようにして排出された「廃石膏ボード」は、有価売却できませんので当然に産業廃棄物として扱われますが、当初の頃は、新築現場から排出されたものは「ガラス陶磁器くず」、解体工事から排出されたものは「がれき類」(当時の呼称は「建築廃材」)に分類されていました。いずれにしても、安定型品目の扱いですので、リサイクルされるごく一部分を除いて、そのほとんどが埋立処分されていましたし、その処分先は、安定型処分場でした。ところが、全国各地の安定型処分場において、安定型5品目以外の物の搬入を原因とする放流水・地下水の汚染が顕在化したことから、平成10年に法改正が行われました。これにより「廃石膏ボード」の埋立は、表層の紙を分離・除去した石膏部分だけが、安定型埋立できることに強化されました。安定型処分場での展開検査の義務付けや、有機物混入防止のための基準として熱灼減量5%以下が定められたのもこの時でした。これを契機として、廃石膏ボードの紙分離のための破砕処理施設が数多く設置され、処分料金を低減させる対策が取られました。
しかし、それから10年も経たない平成18年には、石膏部分についても、安定型埋立が禁止となりました。その理由は、紙を除去した後でも廃石膏に含まれる糖類(紙を貼り付けるための糊の成分)が引き金となって処分場内で有毒な硫化水素を発生させるからというものでした。この改正によって、前出の紙分離設備の有益性が急速に低下してしまい、処分業者の皆様から嘆きのお話をいただいたことが記憶に残っています。なお、これら2回の法改正により、新築工事・解体工事を問わず発生した「廃石膏ボード」は、全て「ガラス陶磁器くず」に統一する解釈に変更されていますので申し添えます。