2018年10月01日
廃棄物ひとくちコラム
第30回 <廃棄物処理法はどう変わったか(その7:産業廃棄物管理票=マニフェスト)>
今回は、産業廃棄物管理票(通称:マニフェスト伝票)に関する規定強化の歩みを見てみたいと思います。法律に初めて「産業廃棄物管理票」が登場するのは、平成3年の大改正の時です。この時、特別管理産業廃棄物の区分が設けられたのと同時に、それに該当する物は、管理票の交付が義務付けられることとなりました。しかし、交付(使用)しないことや虚偽記載に対する罰則は設けられておらず、唯一許可権者は、それらが適正に使用されていない場合、勧告することができる規定になっていました。
その後、平成10年になって、交付義務は普通物にまで拡大され、時を同じくして「電子マニフェスト」の制度がスタートしました。現在では、当たり前に使用されていますが、廃棄物処理法の歴史で言えば、20年弱の比較的新しい制度だということが分かります。こうして全ての産業廃棄物の処理委託に際し、交付義務が設けられましたが、それまでと同様に違反した場合の措置は、勧告留まりでした。
それから2年後の平成12年には、従来6枚綴りだった管理票が7枚綴りに変わりました。中間処分業者へ産業廃棄物を処理委託する場合、それまでは、排出事業者の責任範囲は、当該中間処分が完了するまでとされていた従来の規定が見直され、再生又は埋立処分されるまで(これを「最終処分」されるまでと定義)に変更されたことによるものです。また、この時の改正により初めて、管理票を交付しない排出事業者に対する罰金制度が創設されました。
適正処理終了を確認する目的で使用(交付)が義務付けられている管理票ですので、正しい交付や処理終了の記載がされる筈ですが、残念ながら不正処理を誤魔化すために虚偽記載を行う者が散見されたことから、平成16年には、虚偽記載禁止の条項が設けられるとともに、罰則も規定されました。翌17年には、措置命令(不法投棄等の原状回復命令)の対象者に、管理票手続きに関して不正があった者が追加されました。
さらに管理票の規定に関して調べていくと、「なぜ?」と思うことに行き当たりました。それは、管理票の保存義務についてです。処理業者(収集運搬及び処分受託者)には平成17年の法改正で5年間の保存義務が規定されましたが、排出事業者に対する管理票B2、D、E票の保存義務が規定されたのは、それから5年後の平成22年の改正からでした。管理票の使用目的が排出事業者の適正処理終了確認手段であることを考えると、この規定強化の流れ・順番はどうしても理解が出来かねるところです。改めて調べてみたいと思います。
その後、平成22年には管理票の交付を受けずに処理業者が産業廃棄物の引き渡しを受けることが禁止されました。それまでは、管理票を用いない産業廃棄物の処理委託に関して、法違反が問われるのは排出事業者だけであったものが、処理に係る全ての者に適用されることなりました。
さらにダイコー事件を受け、本年4月から管理票虚偽記載に係る罰則が2倍に強化されました。(6箇月以下の懲役又は50万円以下の罰金⇒1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)管理票使用義務付けの目的が「排出事業者の適正処理確認手段」である以上、再発防止手段としては止むを得ないものと考えます。