2018年12月03日
廃棄物ひとくちコラム
第32回 <排出事業者に対する措置命令>
前回は、産業廃棄物管理票(通称:マニフェスト伝票)に関して照合確認の重要性を書き、場合によっては排出事業者に措置命令が発出されることもある旨注意喚起をさせていただきました。これについて、分かりにくいので詳しく教えて欲しいというお話をいただきましたので、もう少し掘り下げて書いてみたいと思います。
まず、「措置命令」は、廃棄物処理法において、被命令者(名宛人)に義務を課す最も重い行政命令(これも不利益処分に含まれる。)です。例えば、①不法投棄②収集運搬・処分業者の不適正大量保管③処分業者の不適正処分等を原因として廃棄物が放置され、その状況が継続すれば著しい環境保全上の支障を生じる可能性がある事案が発生したと仮定します。
この場合、当然にその原因者である行為者に真っ先に支障除去のための措置命令が発出されます。通常命令内容は、投棄や放置された廃棄物の現場からの撤去となります。しかし、①~③のような行為を行う者は、資金力が乏しい場合が多く撤去が完了することは稀です。結果、廃棄物は放置され続け環境保全上の支障が生じる状況は解消されませんので、行政庁(命令者)は止む無く税金を投入して「行政代執行」により、支障の除去作業を行うことになります。
この規定について、責任範囲拡大の法改正が行われたのが、平成12年です。この改正により、行為者のほか排出事業者や処理に係わった許可業者も命令対象者に加えられました。ただし、その適用は①排出事業者が適正な対価を負担していないとき②不正・不適正な処分が行われることを承知していた場合に限られていました。その後、平成15年及び23年の法改正により、被命令者の範囲が拡大され、現在では以下のように非常に厳しいものとなっています。
(1) 不適正な委託により収集運搬又は処分が行われたときは、その委託者(排出者)
(2) 収集運搬又は処分の行程で、以下の管理票に関する義務に違反した者
ア、管理票を交付しない者(排出者)
イ、規定された事項を記載せず、又は虚偽記載して管理票を交付した者(排出者)
ウ、管理票の写しを送付せず、又は虚偽記載して送付した者(収集運搬・処分業者)
エ、管理票を処分業者に回付しない(届けない)者(収集運搬業者)
オ、管理票又はその写しを保存しなかった者(全ての者)
カ、管理票の確認義務に違反し、適切な措置を講じなかった者(排出者)
キ、管理票の交付を受けずに産業廃棄物の処理を受託した者(収集運搬・処分業者)
(3)違反行為を指示又はほう助等により、当該処分に関与した者
前回コラムで紹介した事例は、(2)カに該当するものとなります。何れにしても、契約書に不備があるときや管理票に係る規定が遵守されていないときは、排出事業者は、措置命令の対象者となり得ること、莫大な撤去費用の負担と社会的制裁を受ける可能性があることを承知しておくことが必要です。そういう意味で、たかが契約書、たかが管理票ではなく、排出事業者責任を全うする手段として非常に大切なものであることを再認識していただくようお願いします。