2019年04月01日
廃棄物ひとくちコラム
第36回 <廃棄物処理法に係る許可権限を有する自治体について>
前々回のコラムで静岡県内の許可業者の状況について情報提供させていただきましたが、新たな情報として山梨県甲府市をはじめ山形市、福井市、大阪府寝屋川市の4市が本年4月から中核市に移行したのに伴い、廃棄物処理法上の許可権限を有することになった旨の報道がされています。これにより、廃棄物処理法の許可権限を有する自治体は、別表のとおりとなりました。まとめてみると、都道府県:47、政令市79(内訳は、政令指定都市:20、中核市:58、その他:大牟田市)になります。 都道府県知事が許可権限を有することは廃棄物処理法制定時から不変ですが、許可権限を有する市の数は大きく変化していますので、今回はその変遷について書いてみたいと思います。
昭和45年の法制定時には、第8条(一般廃棄物処理施設の条項、法において知事の権限が最初に登場する条文)の括弧書きで「知事の権限は、『保健所法』に定める保健所設置市においては市長とする。」と規定されていました。全国で20市ほどが該当していましたが、静岡県内には保健所設置市は存在しませんでした。静岡市と浜松市が保健所設置市になり廃棄物処理法の許可権限を有することになったのは法施行後3年が経過した昭和49年4月でした。このような経過から、産業廃棄物行政担当部署は、保健所に置かれることが多く、私が在籍した浜松市も平成8年度までは保健所管轄でしたし、現在でも県の出先機関が健康福祉センター(旧の保健所)に置かれているのもその名残と言えるでしょう。
廃棄物処理法は平成18年の改正で「保健所設置市においては市長」という規定を改めて、第24条の2により「政令で定める市の長」という表記になりました。これを受けた政令第27条第1項で指定都市、中核市及び大牟田市の長と規定されています。平成13年に廃棄物処理法の所管官庁が厚生省から環境省に移管され、法の中身も衛生行政から環境行政へと変化してきたことを反映した法改正と考えられます。ここで、「中核市」という規定が登場することになりますが、これも地方分権の流れの中で、移行要件が徐々に緩和され、当初は人口30万人以上で昼間人口が夜間人口を上回ること等の要件がありましたが、現在では人口20万人以上のみが要件となっていることから、雨後の筍のように中核市が増加し結果として廃棄物処理法の許可権限を有する政令市が急増することになったのです。
こうしたことを背景に、平成29年4月号の本コラムにも関連記事を載せていますが、平成22年に収集運搬業許可の規定が改正され、政令市内での収集運搬業務は県知事の許可を有していれば足りることとなりました。それまでは、県知事許可と別に政令市長の許可が必要でしたので、中核市の増加に伴う収集運搬業者の負担を減らすという意味で画期的な制度改正でした。例えば、今回大阪府内では寝屋川市が加わったことにより、大阪市、堺市、高槻(たかつき)市、東大阪市、豊中市、枚方(ひらかた)市、八尾市、寝屋川市の8市が廃棄物処理法上の許可権限を有する政令市となりましたので、平成22年改正前の規定でいけば府内で隈なく業務を行うためには、府知事許可を含めて9つの収集運搬業許可を取得しなければならないというとんでもない状況が生まれるところでした。
一方で、中核市については課題もあり、人口20万人はクリアしていても中核市移行を選択しないことも多くあります。有名なのは三重県四日市市のケースで平成20年4月に保健所設置市となり同時(当然)に中核市に移行する予定で、別表政令市番号も「113」が割り当てられていましたが、市内に残存する不法投棄物の撤去が完了しなかったことが主な理由で中核市移行が実現せず「113」は欠番のままとなっています。中核市になって許可権限を有するということは逆に言えば産業廃棄物適正処理確保の義務を負うことになりますので、莫大な不法投棄残存物の撤去費用を三重県から引き継ぐことはできないと判断したのでしょう。
また、県内では富士市が人口25万人を超えており、中核市への移行を検討していますが、移行に伴う行政権限の獲得に比べ財政的なデメリットが大きいとの判断で、本年1月に現時点での以降は見送るとの市長会見がありました。中核市移行は、市のグレードアップに繋がり首長・議員等のステータスも向上することだけを考えがちですが、一方でこうした責任の重さも十分に勘案し、移行するなら、十分に業務を果たせる職員数、組織体系を構築していく必要があります。その点で、四日市市や富士市の判断は、賢明なものと私は評価します。