2020年02月03日
廃棄物ひとくちコラム
第46回 <御前崎市における産業廃棄物処理施設設置計画について>
前月号で少し触れましたが、昨年末から新聞報道されている表記の件について情報提供させていただくとともに、私の意見を書かせていただきます。
御前崎市における産業廃棄物設置計画を巡る住民投票結果は、賛成1,565票、反対14,409票で、反対票が全体の9割を超えました。これを受け、御前崎市長は事業者に事業撤退を要請することを表明しました。また、産廃の許可権限を有する県知事も市長の撤退要請はもっともなことだと語ったと新聞報道されています。
事業者は国内を代表する産業廃棄物処理業者である「大栄環境株式会社」で、具体的には日最大能力566トンの焼却炉を設置し、排熱で発電事業を行う計画です。この能力規模は、現在浜松市が天竜区内に計画しているごみ焼却施設が400トン/日であることと比較しても、いかに大規模なものかがお判りいただけると思います。設置予定の場所は、御前崎市内の池新田財産区(市有地)で、既に土地賃貸契約が締結されています。現時点での計画進捗状況は、静岡県環境影響評価条例に基づき平成30年8月9日付けで環境影響調査の意見書が事業者に交付されていますので、おそらく現地調査終了しアセス報告書のとりまとめが行われている段階と推測します。住民投票結果は、法的拘束力を持ちませんので、事業者は(進むか否かは?ですが)粛々と手続きを進めることも可能でしたが、一旦立ち止まり住民合意の形成に努めると表明しています。
建設反対派住民が声を上げるきっかけは、住民に情報提供されることなく、池新田財産区の土地が産廃処理施設用地として賃貸契約が締結されていたことでした。反対派住民は闘争手段として、住民投票条例制定の署名を集め市に提出、議会が条例制定を可決し住民投票の実施に至りました。ある意味、条例制定された段階で反対票多数は想定できたことでした。しかし、投票率60%でしたが反対票が大多数で全有権者数の半分を超えたことは驚きでした。
私は、今回の一連の流れの中で御前崎市の取り組み姿勢に強い憤りを感じています。それは、この計画の出発点が御前崎市の一般廃棄物焼却処理を民間事業者である大栄環境に委ねるところにあった筈で、それゆえに市財産である土地の賃貸契約に繋がったと考えています。これを裏付けるものとして、住民説明会の開催情報がインターネットホームページで閲覧できますが、説明会の中で財産区の役員が、ごみ焼却施設の老朽化対策が必要で民間事業者に委ねることに優位性があることを真っ先に挙げています。それにもかかわらず一連の設置反対運動の中で、市は表に出てきませんでした。そればかりか、この計画は民間事業者の計画で市は関与しないとまで言っていました。現在御前崎市は、牧之原市(旧相良町)と一部事務組合を構成し、ごみ焼却を実施していますが、施設が老朽化していますので維持費・修繕費が増大している状況です。また、牧之原市は旧相良町と旧榛原町が合併して誕生した歴史があって、旧榛原町は吉田町と一部事務組合を構成してごみ処理を行っている関係で、ごみ焼却施設の更新に際しては、3市町の思惑が複雑に絡み簡単には解決できないという事情があります。このような中で、御前崎市が単独でごみ焼却を考える→PFI事業の採用を検討する→最も民間委託に近いBOO方式の採用という思考回路で大栄環境の誘致に向かったと考えれば、市財産区の賃貸契約も納得がいきます。要は、そういうことを正確に市民に説明をして理解を得る必要があるのに、他人事のような言動で住民投票が実施されてしまったことに失望感を持つと同時に憤りを感じます。
最後に、今後の見通しですが、私としては先に述べたような理由から大栄環境には、是非頑張って計画実現に漕ぎ着けて欲しいという願望はあります。計画実現すれば、現状の老朽化した施設から発生している環境負荷は遥かに低減できますし、御前崎市の懸案である一般廃棄物焼却施設更新問題も一挙に解決することができます。また、国内廃プラ処理の困窮状態の緩和に寄与するとの期待も大きいです。大栄環境は撤退の意思表明をしているのではなく、一息入れて体制を整える方針と報道されていますので、今後、状況に変化がありましたら改めて情報提供させていただきます。