2020年04月06日
廃棄物ひとくちコラム
第48回 <産業廃棄物不法投棄の発生状況について>
前回のコラムでは、全国の産業廃棄物の発生状況について書きましたが、今回は、産業廃棄物の不法投棄の発生(発見)状況について書いてみたいと思います。不法投棄は、適正処理の対極にある『最もしてはならない行為』で、廃棄物処理法では最高の刑罰が設定されています。個人に対しては1千万円以下の罰金又は5年以下の懲役が、法人には3億円以下の罰金が規定されています。
環境省では、毎年度、全国の都道府県及び政令市の協力を得て、産業廃棄物の不法投棄について、新たに判明した状況を公表していて、先日平成30年度の調査結果が公表されました。それによれば、平成30年度に新たに判明した不法投棄は、投棄件数155件(前年度163件)、投棄量15.7万トン(前年度3.6万トン)で件数は微減したものの、投棄量は大幅に増加してしまいました。
調査を始めた平成7年度以降の経年変化は、下図のとおりとなっています。
注)都道府県及び政令市が把握した産業廃棄物の不法投棄のうち、1件あたりの投棄量が10t以上の事案
平成30年度に投棄量が増大した理由は、奈良県天理市、神奈川県横須賀市、千葉県芝山町において発生した大規模事案(3件合計で13.1万トン)によるもので、これを除けば2.6万トンとなり、ほぼ前年度並みということになります。グラフから判るように、不法投棄の新規判明件数や投棄量は、ピーク時の平成10年代前半に比べて、大幅に減少しているものの悪質な不法投棄が新規に発覚し、根絶には至っていないというのが現状です。
また、不法投棄された廃棄物が撤去等の対応がされることなく放置されている案件(残存件数)は、全国で2,656件、残存量は1,560万トンにものぼると集計されています。浜松市内業者の処理施設で平成29年度1年間に処分された(もちろん適正に)量が約95万トンでしたので、その16倍に当たる産業廃棄物が放置されていることになります。一旦投棄されてしまうと、原状回復がいかに難しいかが伺える数字と言えるでしょう。なお、脚注に記載したように、本調査の対象は、1現場の投棄量合計が10トン以上のものに限定されていることに注意する必要があります。この量以下の不法投棄件数は、おそらくこの何倍という数になっているものと推定されます。
参考に警察庁が公表している「警察白書(平成29年度統計)」によれば、廃棄物処理法違反の検挙件数は5,109件で、そのうち不法投棄罪によるものが2,593件(50.8%)となっています。不法投棄検挙者の多くは、一般廃棄物投棄者とされていますが、産業廃棄物の場合は、投棄量が多くなるため悪質性は高いことになります。読者の皆様におかれましては、自身が投棄しないことは当然として、委託先又はその先でこのような行為が行われないよう、排出事業者責任の意味を今一度ご確認いただきたきますようお願いします。