2020年08月03日
お知らせ
県外産業廃棄物の搬入協議制度について
皆さんの事業場から発生する産業廃棄物は、どこへ運搬されどのような処分がされているかご存じでしょうか。廃棄物の種類は多岐にわたりますので、複数の処分先と処理委託契約をされている事業者の方も多いことと推察します。運搬料金のことを考慮すれば、地元で処分することにメリットがありますので、通常は、排出場所に近い処分施設に搬入されています。
そうした中で、
1 リサイクルしたいのだが、地元には可能な施設がない
2 特殊な性状を有する廃棄物で、地元に受け入れ施設がない
3 運搬料金を勘案しても、県外施設での処分の方が経済的メリットが大きい
4 サプライチェーンで、県外の処分施設が指定されている
などの理由で、広域移動(都道府県を跨いだ遠方処分施設への搬入)が必要な場合があります。法律では、日本国内であれば、どこへ運搬し処分しても問題はなく、むしろ適正処理や資源化推進のためには、広域移動が推奨されるべきという考え方があります。
にもかかわらず、多くの自治体が条例や要綱を制定して、実質的な流入規制である「県外産業廃棄物の搬入協議制度」を設けています。時期的には、バブル絶頂期の平成初頭頃から制定自治体が増加し、今では規定していない自治体の方が少ない状況になっています。
その流れのきっかけとなったのが、大都市圏の廃棄物が東北地方や九州地方に流入し、そこで不適正な処理が行われ社会問題化したことでした。静岡県内でも東部地域を中心に首都圏の廃棄物が流入し、不適正処理や環境保全上の支障が生じる事例が発生したため、平成2年7月にまず静岡県が、これに倣って同年12月に静岡市、浜松市が要綱による事前協議制度を開始しました。当時、浜松市では、そのような不適正処理事例の発生はありませんでしたが、県だけが流入規制をしたら、規制がないところに流入してきてしまうという危機感を持っての要綱制定でした。
それでは、制度を創設してまで広域移動を制約した理由は何だったのでしょうか。私は、理由は2つあると考えています。1つは、県民・市民の感情の問題です。どうしてこの場所が大都市圏のごみ捨場にならなければいけないのかという部分で、特に東北地方などでは、このこだわりが大きかったと承知しています。2つ目は、法律の隙間を縫って行われる不適正な処分が横行したことでした。
具体的に言えば、次のような法律の盲点(不備)がありました。
1 最終処分場の設置について、管理型1,000㎡、安定型3,000㎡未満のものは、規制対象外で手続き不要であったこと。
2 中間処理業者の処分後の廃棄物の処理責任は、当該中間処理業者のみが有し、中間処理後物の運搬や処分に関しては自ら処理として許可不要であったこと。
などでした。1については平成4年に、2については平成12年に法改正がされてこのような抜け道は塞がれましたが、それまでは山林に穴を掘り、自社物として埋立処分すれば、違法処理を問えないという今からすればとんでもない状況が、広域移動を制限する制度創設に走らせたと言えます。
このような経過で、法律の不備は解消されましたが、住民感情の部分は依然として残っていますので、各自治体は、なかなか制度廃止ができないのではないかと推測します。国もことあるごとに「県外廃棄物の事前協議制度を設ける等の運用は、法による規制を超えたものであり、搬入規制の廃止・緩和を速やかに実施されたい」として広域移動の妨げとなる要綱等の見直しについて通知を発出しています。制度制定に拘わった私が言うのも気が引けるところではありますが、法整備がされた現状では、廃止を検討する時期に差し掛かっているものと考えます。
そうした中で、県内自治体では規制緩和措置として、搬入先が「優良認定業者」であるときは、事前協議を不要とする制度改正がされたことは、一歩前進と言えます。
なお、読者の皆さんの多くは、静岡県内に所在する事業場と推測しますので、県内自治体の条例は適用されませんが、愛知県・岐阜県等へ搬出処分する場合には、夫々の自治体の条例・要綱が適用され、事前手続きが必要となりますのでご承知おきください。