2020年09月07日
お知らせ
廃棄物処理法に基づく報告徴収について
2年前の夏、県内200社を超える産業廃棄物排出者や処理業者のもとに、山梨県知事名で、県内で発生したB社による不法投棄に(間接的に)関与した疑いがあるので、Y社に委託した「廃石膏ボード」の処理について、契約書・管理票写しの提出をするよう求める文書が届きました。弊社にもこれが届き、少し驚いた記憶がありますが、Y社への処分委託がありましたので、後日、報告書と該当書類の写しを持参して、山梨県庁担当課へ提出に伺ったことがありました。山梨県としては、本コラム第32号(2018年12月)に記載したように、B社が起こした不法投棄事件に関して、おおもとの排出者からY社を含むそこに至るまでの過程で廃棄物処理法上の違反行為があった場合は、直接投棄に関与していなくても責任追及可能である規定を適用できるか否かを判断するための文書発出でした。
廃棄物処理法第18条第1項には、「都道府県知事(政令市長を含む。)又は市町村長は、この法律の施行に必要な限度において、事業者、処理業者、廃棄物処理施設設置者、その他関係者に対し、廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物の保管、収集運搬若しくは処分、廃棄物処理施設の構造若しくは維持管理等に関し、必要な報告を求めることができる。」と規定されています。これでも一部省略して記載していますが、「若しくは」が3回も登場する法律特有の長文の構成となっていますので、判り易く解説してみると次のようになります。
1 産業廃棄物の処理や廃棄物処理施設の維持管理については、都道府県知事又は許可権限を有する政令市長に、一般廃棄物の処理に関しては市町村長に与えられた調査権限であること。
2 報告徴収対象者は、廃棄物の発生から処理に係る者全般にわたること。
3 廃棄物の発生から処理全般について文書による報告を求めることができること。
つまり、許可権者は、法規定に照らして適正(又は法違反)か否かを判断するため、物の排出や性状、取り扱い状況、契約書・管理票の状況等に関して、当該物の処理に関わった者に対し、期限を定めて報告書の提出を求めることができるという規定です。また、本コラム第4号(2016年4月)に記載したように、廃棄物か有価物かの境界は不確定要素が多いことから、「廃棄物の疑いがある物」という表現が加えられています。ですから、有価物だからこの求めに応じる必要がないと判断して、提出しなかった場合には、結果、有価物と判断され廃棄物処理法上の違反行為がなかったとしても、報告拒否で罰金刑に処されることもあります。
法律には、「この法律の施行に必要な限度において」と規定されていますので、法律上の疑義がある場合に限るという制度ではありませんが、私の経験上、やたら発出するものではないことから、こうした文書を受け取った時は、適正処理が疑われていると判断しても間違いはないでしょう。ただし、自己弁護のために虚偽の報告をすることは、絶対にやめるべきです。許可権者は、一方の言い分だけでなく、多くの関係者の報告を基に違法性の判断をしますので、後で虚偽報告が判明した場合は、大きな代償を求められる結果となります。
行政担当者が来社し、適正処理を確認する立入検査の際、「指導票」が交付され報告を求められることがありますが、これも法18条を根拠とする報告徴収と考えてよいと思います。また、今でこそ条例・細則が整備されていますが、過去には、収集運搬業者の年間実績等について、これを根拠にする報告徴収が行われていたこともありました。
以上のとおり法第18条に基づく報告徴収は、許可権者にとっては広く情報を集める手段ですが、受け取った側にとっては、嬉しくない場合も多いのが現実です。それでも、冒頭の例にあるように、受け取ったこと=違反行為をしていることにはなりませんので、報告対象者となった場合にも真摯な対応をお願いします。