2021年08月02日
お知らせ
熱海市内で発生した大規模土石流災害について
7月3日午前に発生した大規模土石流については、130棟以上の家屋が巻き込まれたうえに、20名以上の方が死亡または行方不明になるなど、稀に見る大災害となっています。被災された皆様には、心からお見舞いを申し上げます。
今回の災害報道では、大変気になる記事が掲載されています。それは、土石流災害を誘発したとされる残土による嵩上げ工事に関して、木くず等の産業廃棄物の混入があったとされることです。残土は、建設工事に伴い発生するのが通例で、ずさんな工事監理の中で進捗した場合は、残土中にがれき類や木くず等が混じってしまうことが多く見られます。おそらく、当該現場にもこのような工程で発生した産業廃棄物混じりの残土が搬入されていたものと推定できます。
新聞記事では、過去に木くず等の産業廃棄物の混入があり、県が指導したとの報道がされていますが、行為者は指導事項を履行したのでしょうか。一連の報道では、全く行政を無視した対応をしている業者と見えますので、履行していない若しくは表面の見える場所だけ拾った程度と推測するのが妥当でしょう。木くずは水分を持っていますし、腐敗して分解しますので、土にこれが混じっている場合は、土木的な強度が低下することは明らかです。また、がれき類・廃プラ等の混入も土砂のみの場合よりも強度が低下することが一般的です。
行政の立場で言えば、指導はしたが、業者が対応しなかったで終わってしまったケースかも知れませんが、こうした災害発生をきっかけに行政指導の在り方を検証してみる必要があると考えます。法では、混入物の撤去を命令でき、履行しないときは告発ができる法体系となっているわけですから、法に基づく命令発出等の手続きを行わず、中途半端な対応で終わってしまっていることに、行政の責任がないとは言えないと考えます。
また、これとは別に嵩上げ工事の目的が、何であったかも注目される点です。単なる残土処分のためであったのか、工事完了後建築用地として利用する目的であったかです。後者の場合には、擁壁や排水設備を設けたり、土砂搬入工事の途中も「締め固め」と言って転圧を掛ける作業を行いますが、前者の場合は、そうした作業がおざなりになる場合が多く見られます。別荘地熱海と言えども用途地域が指定され、無秩序な開発が規制されています。用途地域を調べてみると被災家屋が集中している新幹線北側は、第2種中高層住居専用地域又は近隣商業地域ですが、嵩上げ工事現場は、市街化調整区域となっていますので、おそらく単なる残土捨場としての利用であったと推測できます。この場合であっても、静岡県土採取等規制条例の規定に基づく施工基準が存在しますので、どの程度遵守していたのか、また基準不適合に対して行政がどう対応していたか、基準の設定自体が適切であったかも検証し、今後の教訓としていく必要があります。