2021年09月06日
お知らせ
山梨県内における汚泥の不法投棄について(第6報)
8月25日付け静岡新聞朝刊の第1面記事で、ニッケイ工業が10年間にわたり富士川支流雨畑川に汚泥の不法投棄を繰り返していたことに伴い、汚泥に含まれる魚毒性が高い凝集剤18トンが下流水域に流出していたことを報道しています。今回は、本年6月号(コラムNo.61)の続報として記事の内容を読者の皆様にお伝えしたいと思います。
まず、この18トンは、不法投棄総量ではなく汚泥の固液分離のために用いられた化学薬品の数量であることをご理解ください。そのうえで、固液分離後(濃縮後)の汚泥の雨畑川への流出量は何と3万立方メートルを超えることが判明しています。つまり、不法投棄された凝集剤を含む産業廃棄物のうち、相当量が支流の雨畑川、富士川本流さらには駿河湾の水底に堆積していると推定できます。また、今回の新聞報道で特に問題視しているのは、使用された凝集剤成分に魚毒性の高い薬品が多量に含まれている点です。数字的な裏付けはされていませんが、富士川では10年ほど前からアユの生息数が急激に減少したとの指摘があり、不法投棄・薬品の流出との関係が疑われています。さらに、その先の駿河湾ではサクラエビの不漁現象も生じ、同様の疑いが掛けられています。これについては、山梨・静岡両県が環境省と連携して凝集剤成分の拡散状況を調査中ですので、その結果を待ちたいと思います。なお、魚毒性の高い薬品の生物(人を含む。)に対する影響については、素人の私はうまく説明できませんので、以下のホームページをご覧ください。
「あなたの静岡新聞」
https://www.at-s.com/news/article/special/sakura_ebi/007/852013.html
ここまで書いてきて改めて思うことは、10年間も不法投棄を続けていたことについて、行政機関(監督官庁である山梨県のほか流域自治体を含む。)が初期段階で気が付き、それを止めさせることができなかったかという点です。下流雨畑川には異常な濁りが発生しますし、本流合流地点での両河川の水質の差は歴然で、しかもその状態が長期間に亘って継続したと推定できます。このような状況に、行政機関の職員は疑問を持って当然ですし、住民からの通報が寄せられていたかも知れません。先日の熱海市における残土処理場を発端とする土石流発生事件のときにも書きましたが、事件発生前にどのような経過があったのか、どのような指導をしたのか、その結果行為者がどのような対応をしたかは大変に重要なポイントになります。もし仮に何らかの調査・指導が行われていたとしたら、それは全く無益な時間浪費であったと断罪されるべきです。
また、事件発覚後この2年間の山梨県の対応を見ても、後手後手に回っており、適切な行政権限の執行がされていないことに怒りさえ覚えます。それは、不法投棄を認定し、行為者や投棄量まで確定させながら、廃棄物処理法に基づく命令や許可取消し等の不利益処分の発出を行っていない、刑事告発をしていないことなど行政に課された責務を全うしていません。
前出の河川等への影響調査は計画通り進めて行く必要がありますが、その調査結果を待つまでもなく、これらの手続きは行われなければなりません。