株式会社リサイクルクリーン

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2018年08月06日

TUBOJUNコラム

第43回  「世話敷と云わぬが能きなり」

皆さま、こんにちは!いきなりですけどワタシ、言われなくても分かっていることを言われると、ついイラっときてしまうことが結構あります。人間小さいですから。この夏、「暑いですねぇ~」なんてのは「そんなの言われんでも分かってるっ!!」とつい反応してしまうのです。ただの挨拶に対して何て野暮な・・。テレビをつければつけたで、「今日は暑い一日でしたねぇ~」なんてニュースを見ると、「そんなのニュースかいっ!!」とツッコんでしまう始末。ええ、気にしてません。人間出来てないの分かってますから。

そんな私のようにちっちゃな人間でなくてもイラっとするのは、言われなくても分かっていることを言われる場合より、言わなくてもいいことを言われる場合でしょう。一つ挙げれば、「忙しくて・・」なんて言葉。思わず「はぁ~、どこが?」と、やはり言わなくてもいい言葉で返してしまいそうで恐い。「忙」という字は分解すると、りっしんべん、つまり「心」が「亡」いとなる。要するに我を失ってるってこと。テンパってるか、不機嫌なのか、言い訳したいか、大体そんなとこじゃん。分かった!?・・喧嘩になりますね。

で、話は変わって、先月、リサイクルクリーンの第32期定時株主総会が開かれました。今回は役員の改選期にあたり、何名かの役員の入れ替わりがありました。私は末席ながら(残念ながら?)再任。しかし、役員改選に併せて社内体制が大きく変わることもあり、新任された6年前よりも今回の再任の方が改めて身が引き締まる思いです。ちょうどその6年前、ある人に勧められて佐藤一斎の「重職心得箇条」(私が読んだのは安岡正篤の「佐藤一斎『重職心得箇条』を読む」)を読んだなぁ。そんなことを思い出しました。

佐藤一斎は江戸時代後期の儒学者。美濃の岩村藩の家老の子息で、その碩学により幕府の昌平坂学問所(今でいう東京大学)の総長でもあった人物。一斎に学んだ門人の幅は広く、山田方谷や佐久間象山らの他に幕末の西郷隆盛も強い影響を受けています。一斎は岩村藩の家老としても主に重職の指導を命ぜられ、藩の十七条憲法として「重職心得箇条」を書いたのです。それはリーダーとしての行動方針であり、その普遍性は現代にも通じます。十七条全てを紹介したいところですが、最も有名な第八条を引用しましょう。

「重職たるもの、動向繁多と云ふ口上は恥べき事なり。仮令世話敷とも世話敷と云はぬが能きなり、随分手のすき、心に有余あるに非れば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職多事になる勢あり」

口語訳すると・・
「重役たる者は、仕事が多いとか、忙しいという言葉を口に出すことを恥ずべきである。たとえ忙しくても忙しいと言わない方が良い。常に手を空かせ心の余裕が無ければ、小さな事に心を奪われ大事な事に気付かない。細かな事まで自分でやり、部下を指導し任せるということが出来ないから、部下の仕事に余計な手出しをするだけでなく結果それに振り回されてしまう。だから、重役のくせに仕事が多くて忙しいと言うのである」

重職といわず組織や集まりの中で何らかの役割を持っているなら噛み締めるべき言葉でしょう。特に「忙しい」が口癖の方々に捧げます。えっ!?耳が痛い?ところで、オマエはどうかって?「忙しい」と口にすることは絶対にありません。そもそも忙しいと感じることも余りありません。何故かって?別にこんな難しいことを心得ている訳ではありません。単なるモノグサ、やらないだけ。まあ良く言ってせいぜい「そうせい候」ってとこ。そんな半端者を支え続けていてくれる優秀なスタッフたちには頭が上がりません。感謝!

ところで、佐藤一斎と「重職心得箇条」にまつわるエピソードを少々。かつて小泉純一郎氏が首相であった当時、外務大臣を務めていた田中真紀子氏の目に余る言動を諫めるため「重職心得箇条」を読むようプレゼントしました。それに対して田中氏は「こんな江戸時代のカビの生えた話など要らない!」と言い放ったのだとか。また、小泉氏が首相に就いて間もない頃、一斎が四十余年に渡って綴った箴言集「言志四録」の中から次の名文句を、教育関連法案を衆議院で論戦している中で述べて一躍有名になったこと、覚えてます?

 少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。
 壮にして学べば、則ち老いて衰えず。
 老いて学べば、則ち死して朽ちず。

「言志四録」といえば、かの西郷隆盛が心酔し愛読書としていたことでも有名です。西郷は「言志四録」の中から101条を書き出して終生持ち歩いていたのです。それが「南洲手抄言志四録」として遺されています。西郷隆盛の思想のバックボーンたる座右の言葉の数々をつぶさに味わうと、当時の西郷の心境が浮かび上がってきます。西郷が自らの意思に反して西南戦争に駆り出されたのは何故なのか?大河ドラマに採用されて改めてブレイクしている、あの西郷どんですから。とっても興味深くなったでしょ!?

 人は須らく忙裏に閒を占め、苦中に楽を存する工夫を著くべし。

「言志四録」は、「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋(てつ)録」の四書から構成されていて、「言志耋録」の第113条に収録された言葉。そして「言志四録」に収められた総数1133条の中から、西郷隆盛が101条を選んだ「南洲手抄言志四録」の中の93条として遺された言葉。世話敷と云はぬが能きなり。だからこそ、こうありたい。

TUBOJUNの日々の仕事の様子はコチラ http://www.recycle-clean.co.jp/stuff/blog04

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