2020年12月07日
お知らせ
産業廃棄物の適正な処理に関する条例について
廃棄物処理法が制定されて今月でちょうど50年が経過します。この間には、廃棄物を取り巻く多くの事件事故が発生し、その対策として法改正が重ねられてきたことは既報のとおりです。これによって、大変に難解でかつ詳細な規定が羅列される結果となりましたが、それでもなお足りない部分があって、各自治体が条例を定めそこを補っています。
現在静岡県内で適用される条例として読者の皆さんに最も関係が深いのは、「産業廃棄物の適正な処理に関する条例」ですので、今回はこれについて書いてみたいと思います。
まず、基本的な事項として、県内には①静岡県②静岡市③浜松市と廃棄物処理法に基づく許可監督権限を有する3つの自治体が存在します。従って、同様な名称・趣旨の条例が3つの自治体毎に制定されています。平成19年10月に県条例が施行され、その後両政令市が追随して制定し、現在に至っています。条例で定めている主な規定を挙げてみると
(1)産業廃棄物管理責任者の選任
(2)処分委託先等の実地確認
(3)産業廃棄物の不適正な処理に係る措置
(4)県外産業廃棄物の搬入に係る手続き
(5)土地所有者等の講ずべき措置
(6)勧告・命令及び公表
となっており、県条例では産業廃棄物処理施設の設置に関する事前手続きを加えています。この部分は、両政令市では別に「紛争の予防と調整に関する条例」を施行していますので、本条例には規定されていません。
排出事業者(中間処分後物の排出者を含む。)の皆様にとっては、(2)に規定している実地確認義務が、本条例の中では最も重要な部分と考えます。廃棄物処理法第12条第7項では、「産業廃棄物の処理委託に際しては、委託先の処理の状況を確認するよう努めなければならい。」旨の規定がありますが、法では努力規定に留まっており義務化まではされていませんので、そこを義務規定とするため条例規定が設けられています。法律の原則は、排出事業者責任で、契約書を作成する+管理票を使用することで書面上の確認はできるのですが、委託先施設が適正な運営がされていて自らの身代り施設として適切であるか否かを実際に現地に足を運んで確認・判断することを求めているのです。
ここで、注意しなければならないことが、2つあります。1つ目は、浜松市条例では、過去5年間の年間平均産業廃棄物排出量が10トン未満(特別管理産業廃棄物にあっては0.5トン未満)である排出事業者は、実地確認義務が免除されていることです。私は現役時に、この条例の制定に従事しましたが、この裾切り規定のところが最も決定に時間を要した部分でした。排出事業者責任の全うという点では、県条例のように全ての排出事業者に実地確認義務を課すべきですが、一方で排出量が少ない中小零細事業者にまで同様の義務を求めるかは政策的効果として如何なものかという議論になりました。結局、データ解析をしてみると年間排出量10トン以上の事業者が市内全排出量に占める割合が90%以上に達することが判り、それ未満の排出事業者には、この規定を免除することに決定しました。県条例・静岡市条例が適用される排出事業者の皆様には、この免除規定がありませんので、年間に1回でも処理委託がある場合は、その前に実地確認義務が課されていることをご承知おきください。
2つ目は、処理委託先が「優良認定許可業者」である場合の履行免除規定です。3自治体とも条例制定当初は、この規定が存在しませんでしたが、現在では、処理委託先の許可業者が優良認定を受けている場合は、実地確認義務を免除するよう改正されています。優良認定を受けている業者については、インターネットに施設や処理に関する情報が掲載されていることから、これを確認することにより実地確認を省略できることにしています。ただし、あくまでも義務を免除しているだけであって、排出事業者が自主的に行う実地確認までも否定しているわけではありません。従って、優良認定を受けている弊社にも、実地確認をされる排出事業者の方が見えますので、御案内をさせていただいているところです。
最後に、実地確認で何を見てきたら良いかについてです。よく見かけるケースは処理業者の看板の前で確認者を入れて撮った写真と、稼働中の施設の全景写真を貼って終わりというものです。これでは、現地に出向いた証拠にはなりますが、適正な運営がされていることの確認にはなりません。県・市のホームページの「産業廃棄物の適正な処理に関する条例の解説」の最後に、チェックシートのひな形が掲載されていますので、これをダウンロードしてお使いいただくことをお勧めします。何れにしても、実地確認の実施・記録の作成・5年間の保存はセットですので漏れが無いよう確認をお願いします。