2021年02月01日
お知らせ
年頭に当たって
社内的な手違いで編集責任者にコラム原稿が届かず、前月号は掲載することができませんでした。楽しみにしていただいている読者の皆様には大変申し訳ありませんでした。ひと月後れとなりましたが、明けましておめでとうございます。コロナに振り回された令和2年が過ぎ、読者の皆様には健やかに新年をお迎えのこととお慶びを申し上げます。
振り返れば、昨年は、コロナ感染症の影響で、多くの国において甚大な人的・経済的な被害が生じました。また、現在でもなお決定的な予防手段が見つからないために、感染者数は減少せず、緊急事態宣言が再発出されるなど自分が明日罹患しない保証はない状況が継続しています。「コロナは単なる風邪」だと言っていた大国のリーダーは落選しましたが、そう言えるワクチンや治療薬の一日も早い普及が待たれるところです。
さて、1年の始めですので昨年1年間を振り返りながら、環境・廃棄物分野における今年の展望をしてみたいと思います。
まず最初に、昨秋誕生した菅政権では、「我国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と発言し、続けて「すなわち、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」として施政方針演説を締めくくりました。あと30年弱でこれを実現することは容易ではありませんが、新規就任した総理大臣が環境対策を政策の柱の1つに掲げたことに大きな意義があると感じています。今後の脱炭素社会の進展に期待する一方で、どのような具体策が示されてくるのか、それが国民や産業界にとってどのような痛みを伴うものなのかに注目していく必要があります。
私ごとではありますが、昨年末にこれまでのガソリン車からプラグインハイブリッド車に乗り換えました。一足飛びにEV車というには勇気が必要でしたので、中途半端ではありますが、こういう形になりました。日常業務の使用は、ほぼバッテリーで足りていますので、多少は二酸化炭素削減に寄与しているのでは?と考えています。
次に、法律改正に関しては、平成の31年間で43回の法律改正が行われた流れは、一段落と考えています。そうした中で、廃プラスチック類の多量排出者に対しては、リサイクルの義務化を検討しているという情報が流れてきています。中国ショックや海洋プラスチック問題に端を発した廃棄プラスチックの処理は大きな環境問題ではありますが、優良認定処分業者に対する保管上限の引き上げ等の小手先の対策ではなく、もっと国が主体性をもって抜本的な対策を打ち出して欲しいと思っています。こうした点で、多量排出者への義務付けの内容に注目していく必要があります。
廃棄物処理を巡る事件・事故としては、11月号コラムに取り上げた伊豆市における不法投棄事件の後始末がどうなるのかに注目しています。緊急対策として設置した堆砂垣により流出は止められているようですが、これは暫定対策でしかあり得ません。行為者の特定、土地所有者の管理責任を追及する中で、廃棄物の完全撤去を含めた原状回復と再発防止対策の確立が求められています。また、新聞報道によれば、県議会の常任委員会では、当局に対して刑事告発を行うべきとの意見が出されていますので、その行方にも注目です。
廃棄物の不法投棄関連ではこのほかに、一昨年度発生した富士川支流雨畑川における汚泥投棄事件の後結末がうやむやになっていることに危機感を持っています。昨年3月末までに投棄された汚泥の撤去を完了するとのことでしたが、それが達成されたか不明ですし、不利益処分命令が発出されたとの情報もありません。新聞報道によれば、現場下流の河川敷に堆積した汚泥が川底の砂利を覆っている写真が掲載されていたほか、中流部及び河口部にも当該汚泥に酷似した泥状物が堆積しているとの記事がありましたので、大きな環境影響が生じていることは間違いありません。伊豆市事件と同様、許可権限を有する自治体の毅然たる対応を期待したいと思います。
最後に、御前崎市における廃棄物焼却施設設置を巡る問題にも注目していきたいと思います。住民投票では圧倒的多数の反対票が投じられましたが、事業者は撤退を表明するどころか、住民理解を得るための説明会を再開しています。昨年2月号コラムにも書きましたが、地元の御前崎市の優柔不断さが紛争の原因となっていると私は考えていますので、今後の事業者・御前崎市の対応に注目していきたいと思います。
以上、こうした世相の中で、なかなか明るい話題で年明けとはなりませんが、皆様にとって良い1年となりますことを祈念し、本年最初のコラムを閉じます。引き続きのご愛読宜しくお願いします。