2021年05月10日
お知らせ
一般廃棄物処理業許可と産業廃棄物処理業許可の性格の違い
廃棄物には、一般廃棄物と産業廃棄物があり、排出事業者自らが運搬できない場合は、許可を有する業者に委託しなければなりません。また、一般廃棄物は、市町村長が許可した一般廃棄物収集運搬業者に、産業廃棄物は、原則、都道府県知事が許可した産業廃棄物収集運搬業者を選定して委託しなければならないことは、基本的事項として皆さんご存じのとおりです。
そうした中で、トラックや塵芥車を所有して産業廃棄物収集運搬業許可を取得している業者の方から、一般廃棄物も取り扱いたいので、その許可を取得したいという相談がしばしば寄せられます。そのような時、私は「一般廃棄物処理業許可は、特殊性が高く容易に取得できません。」とお答えし、諦めるよう説得しています。
今回は、そうした一般廃棄物処理業許可と産業廃棄物処理業許可の性格の違いについて書いてみたいと思います。
このことを考えるとき、まず最初に言えることは、廃棄物処理法では、一般廃棄物についての統括的な処理体系の構築が市町村の責務になっていることです。第6条第1項では、市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画(一般廃棄物処理計画)を定めなければならないと規定し、同条第2項第4号では、一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する事項を一般廃棄物処理計画に記載しなければならないとしています。つまり、一般廃棄物の処理については、市町村の統括的な責任の下、処理計画に記載された者によって収集運搬や処分が行われなければならないことを規定しているのです。
また、一般廃棄物の収集運搬については、直営業務又は委託業務により実施することを原則とし、その処理が困難なものを一般廃棄物収集運搬業許可によりカバーするというのが基本となっています。ここで言う「処理が困難な業務」とは、例えば事業所から多量に発生する一般廃棄物、深夜~早朝に収集業務を行わないと衛生上・美観上の支障が生じる飲食店の廃棄物等の収集業務が挙げられます。ですから統括的責任を負う市町村は、これらの数量を勘案して必要な運搬能力を算定し、必要なだけの業者数に留め、それを一般廃棄物処理計画に記載して公表する義務が課されているのです。
判例でも、「市町村が当該許可を与えるかどうかは、同法の目的と第6条とに照らし、市町村がその責務である一般廃棄物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から、これを決すべきものであり、その意味において市町村長の自由裁量に委ねられていると解するのが妥当である」としていますし、この判決後国も、一般廃棄物処理業の特殊性と市町村長の自由裁量性について通知を発出しています。
世の中は、規制緩和の方向へ推移しているが、一般廃棄物処理業(ほとんどが収集運搬業)は、市町村による一般廃棄物処理を補完するという性格を有しているため、それに馴染まないと明記しています。
一方、産業廃棄物処理業許可は、全てが排出事業者責任のもとに、委託を受けた許可業者による自由競争の世界で適正処理の遂行を求める法制度になっています。従って、許可要件を満たしていれば、既存の許可業者数に関係なく、許可しなければならないところが、一般廃棄物処理業許可との大きな違いです。
一般廃棄物処理業許可は、市町村長の裁量許可であるのに対し、産業廃棄物処理業許可については、許可要件を満たしていれば許可以外の選択肢はないという意味で羈束許可(きそくきょか)という考え方がされています。