2017年07月05日
廃棄物ひとくちコラム
第18回 「水銀廃棄物に係る法律改正ついて(その1:改正概要)」
水銀廃棄物の環境上適正な管理を確保するため、去る6月9日に廃棄物処理法施行規則の一部を改正する省令が公布され、本年10月1日から施行されることになりました。これを受けて同月中旬には、環境省ホームページに「水銀廃棄物ガイドライン」がアップされました。今回の法改正は非常に多くの排出事業者及び処理業者の皆様に関係する事項と考えますので、内容をご確認いただき対応を間違えないようにお願いします。また、県内の廃棄物担当部局でも同様の認識を持っていると伺っていますので、改正内容周知のための説明会の開催等が予想されます。読者の皆様は情報収集に努めていただきますようお願いします。
改正内容の運用については、許可権限を有する廃棄物担当部局の取扱いが公表されないとお伝えできない部分がありますので、取り敢えず今回は速報ということで法改正の概要についてお知らせします。
1 水銀廃棄物規制について
平成25年10月、地球的規模の水銀汚染を防止し、水銀による健康被害を全世界から撲滅することを目的に「水俣条約」が採択されました。日本は昨年2月に条約を締結、本年5月には締結国数が条約発効要件である50か国に達したことから、90日経過後の8月16日に水俣条約は発効することになりました。
2 国内における水銀回収の現状
①廃金属水銀(退蔵物質等)からの回収:9トン
②水銀含有の汚泥・ばいじんからの回収:3トン
③水銀使用製品(ランプ・計測器等)からの回収:4トン
④非鉄精錬スラッジからの回収:36トン
3 国内における水銀の使用状況等(市中保有量があるため前項数値と一致しない)
①水銀使用製品の生産に使用:8トン
②輸出:72トン
③中間処理後物として埋立処分:4~9トン
4 水俣条約発効に伴う変化
3①及び②は禁止となります。⇒回収した金属水銀はこれまでは有価物として取り扱われていましたが、廃棄物として取り扱わなければならなくなるとともに、従来は安易に環境放出されていた微量水銀を回収する必要が生じてきます。従って、水銀を含有する製品が廃棄物となった場合には水銀の回収を行うことと、回収した水銀は特別管理産業廃棄物として経費を掛けて安定化処理した後、最終処分場に埋立処分することが義務付けられます。
5 水銀使用製品産業廃棄物について
私達の周りにあるものでは、①水銀電池 ②蛍光ランプ ③真空計 ④水銀式体温計 などが水銀含有製品産業廃棄物に該当することになります。 これらを、廃棄する際には、次のような新たな措置が必要となります。
(1)保管 他の物と混合しないよう仕切りを設ける
掲示板の産業廃棄物種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」であることを表示する
(2)収集・運搬 破砕することがないようにする
他の物と混合しないよう仕切りを設ける
(3)処分・再生 水銀が大気中に飛散しないような措置を講じる
回収した水銀は、特別管理産業廃棄物として適正処理
破砕後物の安定型最終処分場での埋立処分は禁止
(4)委託契約書 委託する産業廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」を記載する
(5)管理票(マニフェスト) 産業廃棄物の種類に「水銀使用製品産業廃棄物」を記載する
⇒電子マニは、施行日までにシステム変更可能。紙マニは手書きで加筆
6 水銀使用製品産業廃棄物の受入業者について
前項(3)に記載したとおり、水銀が大気中に飛散しないような措置を講じた処分施設を有する者のみが10月1日以降受け入れができることになります。県内中部以西では数社しかそのような設備を有していないとの情報ですし、それらが法律で定める「大気飛散しない設備」に該当するかも定かではありません。まだ先のことと考えるのは危険ですので、水銀含有製品産業廃棄物に該当する廃棄物を取り扱われる方は少しでも早く法律改正後の対応を検討されることをお勧めします。